BLEACH 千年血戦篇

SPECIAL

森田成一(黒崎一護役)インタビュー

一護の登場シーンにも大きな秘密が――
作品の秘密に迫る「-訣別譚-」

――第2クールの魅力や見どころを教えてください。

森田成一(以下、森田)

死神と滅却師クインシーのぶつかり合いがメインで描かれるので、護廷十三隊と星十字騎士団シュテルンリッターそれぞれの戦いが大きな見どころだと思います。
滅却師の技や能力が今まで見たことないものばかりで、原作を読んでいるときも「久保先生の想像力はすごいな」と思っていました。
「果たして映像化できるのだろうか?」というような画を、田口監督の手腕のもとアニメーションで描いていきます。
漫画でも大迫力の場面がどう映像化されるのか、ぜひ楽しみにしていてほしいですね。
また第2クール序盤では、原作で元々一護の出番が少なめなのですが、今回のアニメで原作では描かれていない新たなシーンが付け加えられています。
これはアニメオリジナルの設定ではなく、原作では語られなかったけれど、久保先生の頭のなかにあったストーリーを描いているんです。
一護はちょこちょこしか出ていませんが、そのちょこちょこ登場する場面に『BLEACH』にとってものすごく大きな秘密が隠されています。
今まで謎だった部分を補完していくので、『BLEACH』をさらに深く理解することに繋がるかと思います。
――幾度と修業を重ねてきた一護ですが、霊王宮での修業を演じるにあたって意識したことはありますか?

森田

今までの修業は斬魄刀を持って戦うことが多かったので映像にのせる表現がしやすかったんですが、今回は精神的な部分がメインになってくるので、現象面では表せないんですよね。
心のなかを描くというのは非常に難しいことなので、僕としては今回の修業がいちばん大変でした。
ですが、毎回収録現場に久保先生が来てくださるので「この場面はどういう状況ですか?」「一護にはどれくらいの重力がかかっていますか?」「一護がいる場所の湿度はどれぐらいですか?」と細かいところまで詳しく訊くことができ、すべて自分の中に落とし込んで演じられました。
また、第1クールに引き続き、感染対策で1人での収録だったので、一護が1人で修業をしている一方で、僕も1人で修業をしている…。
状況がリンクしている気がしましたね。
――第1クールで一護の出生の秘密が明らかになりましたが、演じるうえで意識したことはありますか?

森田

人間・死神・ホロウ・滅却師の要素がすべて自分のなかに入っていると知った一護の心情を、どう捉えてどう演じていくかが重要だと思っています。
原作を読んで物語自体は知っていますが、実際に演じるまでは一護と同じ立場になってそういうことを考えないようにしているので、僕が一護をどう捉えるのかは未知です。
演じる過程でこれからわかってくると思うので、そのときに初めて僕自身も納得がいくし、僕が一護として理解できるのかなと思います
――第2クールの収録に臨むうえで、新たに取り入れたことはありますか?

森田

じつは第1クールのときに、10年前とは演じ方を変えているんです。
10年前には出せなかった声を出せるようになったので、発声の仕方や音の成分を変えました。
新しい表現方法がどう映るのか実験的な部分もありましたが、視聴者の皆さんからの反響も良く、久保先生からもお墨付きをいただけたので、自信に繋がりました。
第2クールでは、第1クールの出来事を経て一護が心身ともに成長しているので、第1クールの表現をベースに一護の声をもっと強くしていこうと意識しています。
ただ『BLEACH』全体にも言えることですが、一護って常識を越えていく存在じゃないですか。
常識を越えていく存在に常識的な思考を当てはめても、どこかで無理が生じてくると思うので、一護を固定して捉えるのではなく、一護が自由に動けるような場所を提供することが重要だと考えています。
そうすると一護は勝手に動き始めるし、一護の動きに僕がついていけばいい。
そういう考えに至ったので、肩の力を入れすぎずに演じることができます。
たまに「長い期間演じていて大変でしょう」と言われることもありますが、むしろ楽しくてしょうがないです。
――第2クールで楽しみにしている場面はありますか?

森田

森田:ルキアが卍解する場面ですね(※取材時は第19話放送前)。
原作でもすごく綺麗でしたが、そこからさらに色を帯びて、動きが入り、音楽も流れたらどれだけ美しい表現になるのだろう…、と非常に楽しみです。

積み重ねてきた十数年の歴史
始まりから現在までを紐解く

――『BLEACH』との出会いを教えてください。

森田

小学生の頃から“ジャンプっ子”だったので、連載が始まったときから読んでいて「すごく面白い作品が始まったな」と思いました。
声優として『BLEACH』に出会ったのは、事務所に所属して半年くらいのときに決まったオーディションです。
事務所からオーディションの日付を聞いていて、その前日が暇だったのでバイクで出かけようと思い、テレビを見ながら出掛ける準備をしていたんです。
そうしたらマネージャーから電話がかかってきて、「何やってるの⁉今日『BLEACH』のオーディションだよ!」って言われて。
翌日って聞いていたからおかしいなと思ったら、僕に共有されていたスケジュールが間違っていたことが発覚したので、慌ててバイクでオーディション会場に向かいました。
『BLEACH』は当時から大好きだったので演じたかったけど、3時間くらい遅刻してしまったので「落ちたな」と思いましたね。
でも、ありがたいことに2次オーディションに進むことができました。
その2次オーディションでは、オーディション終わりにちょうど隣の収録ブースで別の仕事をしていた石川英郎さん(浮竹十四郎役)とバッタリ会って、「もうすぐ仕事が終わるから、飯食いに行こうぜ」と誘っていただいたので、その場で待っていたんですよ。
また、同じタイミングで『BLEACH』のオーディションを受けに来ていた杉山くん(石田雨竜役)ともバッタリ会ったので一緒に待っていたら、僕がオーディションを受けたブースから音響さんが出てきて「森田さんってまだ居ますか?」って呼ばれたんです。
「もう一回(オーディションのブースに)入ってください」と言われて、またブースに入って演じました。
そうして突如の三次オーディションにも通過し、最終的には黒崎一護役になることができました。
基本オーディションが終わったらすぐに帰らないといけないので、本来あの場に居ちゃいけないんですけど、もし帰っていたら受かっていなかったかもしれません。
そして、あのときあの場に居た石川さんが浮竹十四郎役、杉山くんが石田雨竜役。
運命の日でしたね。
――『BLEACH』で印象に残っている用語や言葉を教えてください。

森田

斬魄刀の解号はかっこいいですよね。
一護の『斬月』は常時開放型で解号が言えないので、憧れがあります。
昔『BLEACH』で別のキャラクターと中身が入れ替わる設定のゲームがあって、そのときに「赤火砲(破道の三十一)」を打てたのは嬉しかったですね。
ほかにも「天挺空羅(縛道の七十七)」もかっこいいので言ってみたいです。
僕が憧れるセリフは基本難しいセリフで、「黒棺(破道の九十)」を藍染さんが完全詠唱したときは「速水さん(藍染惣右介役)すごくかっこいい!!」と思いました。
藍染さんと浦原さんは説明係の時が多いので、普通の会話でも難しいセリフがてんこ盛りなですよ。
「千年血戦篇」では、ユーハバッハのセリフ量が多いので、菅生さん(ユーハバッハ役)が「こんなに喋るのか」って、いつも言っています(笑)。
第1クールの収録時に「俺(ユーハバッハ)はどれくらい出てくるんだ?」と訊かれたので「今回ずっと喋ってますよ」とお答えしたら、「あのキャラクターで喋るのか?」「喋りますよ、いちばんセリフ長いですよ」、「え!?」と驚かれていました(笑)。
――第1クールの反響はいかがでしたか?

森田

日本のみならず、世界各国からたくさんの反響をいただいて驚きました。
その中には前シリーズが放送されていたときに小中学生だった子たちからの反響もたくさんあって嬉しかったです。
第1クールの第1話冒頭で一護が「卍解!」と叫ぶ場面を見て「これこれ!と懐かしくなりました」という感想をいただいたときに、1つの作品を長く担当することの大切さとやりがいを感じました。
ほかにも「小学生のときに傘を使って“卍解ごっこ”をしていたら、傘を壊してお母さんに怒られた」という内容もあって(笑)。
僕たちが作ってきた『BLEACH』が、その子たちにとって日常であり、憧れや夢だったんだなと思うと感慨深いです。
僕も子どもの頃に『ウルトラマン』や『仮面ライダー』のごっこ遊びをしていましたけど、この子たちの世代にとっては『BLEACH』なんだなと。
こういうエピソードを聞けるのも、10年ぶりにアニメ化されたからこその出来事でしたね。
――「-訣別譚-」にちなんで、最近“訣別”したものはありますか?

森田

僕はカメラが趣味なんですけど、カメラ収集沼と訣別しました。
クラシックカメラを山ほど買っていたので、家に750台くらいあります。
しかもカメラと一口に言っても、カメラ沼やレンズ沼、三脚沼、バッグ沼とか色々な沼があって…。
欲しいカメラは全部買っちゃったし、使いたいカメラも決まったので、昨年から新しいカメラは買わなくなりましたね。
今まで胸元あたりまでどっぷりとカメラ沼に浸かっていましたが、その沼も今は干からびて、ぱっぱっと叩けば泥が落ちる状態になりました。
僕の卍解です(笑)。
――TVアニメをご覧の皆さまにメッセージをお願いします。

森田

第21 話までご覧いただきましたが、一護がなかなか出てこないということに気づいていますか?滅却師と護廷十三隊の壮絶な戦いに大興奮して、『BLEACH』の主人公が誰かをお忘れになっているかもしれませんが、一護もようやく修業から戻ってきました(笑)。
でも『BLEACH』は主人公の一護だけが目立っていればいいという作品ではなくて、それぞれのキャラクターにそれぞれの個性や物語があって、それを紐解いていく物語でもあります。
それぞれの話がとても濃い内容になっておりますので、このまま1話1話じっくりご堪能いただければ嬉しいです。