BLEACH 千年血戦篇

SPECIAL

東山奈央(ジゼル・ジュエル役)インタビュー

随所で実感する
『BLEACH』が重ねた歴史

――『BLEACH』との出会いをお聞かせください。

東山奈央(以下、東山)

学生時代に毎週放送されていたアニメを見始めたことが出会いです。
学校から帰ってきてすぐ見られる夕方帯に放送されていたこともあって、学校で友達と『BLEACH』のことを日常的に話していましたね。
アニメショップに行ってグッズを手に取ってしまうくらい日番谷(冬獅郎)くんのことが大好きだったんです。
クールな性格に惹かれて、たまにギャップのある一面が見えたときにすごくキュンときて……。
そんな日番谷くんは第22話で衝撃的な姿で登場しましたが、まさかジゼルとしてこのような形で関わることになるとは思いませんでした。
当時の私に教えたらきっとびっくりするでしょうね……。
――「-訣別譚-」の魅力を教えてください。

東山

敵を倒したと思ってもまったく油断できず、さらなる展開が巻き起こって、優勢である側がどんどん変わっていく“どんでん返しに次ぐどんでん返し”が見どころの1つだと思います。
護廷十三隊の面々もこれまでに様々な死闘を経て凄まじい強さを持っているにもかかわらず、立ちはだかる滅却師(クインシー)を撃破するためには、さらに強さの限界を押し上げなければならないという。
「とんでもない戦いになっている……」と息を飲んでしまいます。
また「千年血戦篇」全体でいえば、まずアニメ化を知ったときに、再び『BLEACH』の世界がアニメーションで描かれるということが夢のようでした。
キャラクターの声優さんも変わらずなので、アニメを見たときに懐かしさが込み上げてきて、タイムスリップしたような感覚になりましたね。
昔はどのキャラクターをどなたが演じているのかあまり意識せずに見ていたのですが、いざ『BLEACH』のアフレコに行ったら、日頃お世話になっている先輩方がたくさんいらっしゃって「この方々が作られた『BLEACH』を毎週見ていたんだな」と感慨深い気持ちになりました。
声も含めてキャラクターの魅力はそのまま受け継がれている一方で、アニメーションの映像は昔よりも迫力を増していて、一護たちが生きている世界をものすごい迫力で感じられることも「千年血戦篇」の魅力だと思います。
――アフレコで起きた印象的なエピソードはありますか?

東山

第21話で一護が瀞霊廷に戻ってきた場面を、一護役の森田さんと一緒にアフレコさせていただいたのですが、その話数で一護が(更木)剣八に対して「助けに来たぜ」と言うシーンがあるんです。
そのシーンのアフレコで、森田さんがスタッフさんに「(「尸魂界(ソウル・ソサエティ)篇」で描かれた)ルキア奪還のときに一護がルキアに対して同じセリフを言っていましたけど、演じる際に意識したほうがいいですか?」という質問をされていて。
結果、「相手も場面も異なるので意識せずにいきましょう」という方向になりましたが、長い月日が流れてもこれまでの一護との歩みを鮮明に覚えていらっしゃる森田さんの情熱に感銘を受けました。
また、ルキア奪還のエピソードを青春時代に見ていた私としては、一護のまっすぐな生き様を目の当たりにして感慨深い気持ちになりましたね。
どちらの「助けに来たぜ」も、自然と出た一護らしい言葉なんだろうなと印象深かったです。

従来の役作りを封じて生み出された
自由気ままなジゼル

――ジゼルを演じるうえで注意していることはありますか?

東山

ジゼルは誰かと会話するとき、表面的には相手の発言を受けて返事をしているように見えますが、心の中では相手の発言なんて一切興味が無くて、自分のことしか考えていないんです。
なので「会話をしようとしないでください」というディレクションを頂いたのですが、いつも演じるときに大切にしている“会話のキャッチボール”を封じたお芝居には苦戦しました。
意識したのは、会話している相手と温度感を合わせようとせずに、ひたすら自分の世界を生きる、ということ。
それと、私自身から無意識に出てくる感情をコントロールしなければならない、というのも気を付けた部分です。
たとえば、味方のキャラクターが攻撃を受けたとき、普通は「大丈夫かな」と無意識に心配しますよね。
でも、ジゼルはそういった感情の動きをするような子ではないので。
ジゼルを理解して演じるためには、自分にとって当たり前に動く感情をいったん封じて、ジゼルとしてのフィルターで世界を見ないと余計なものがお芝居に入ってきそうでした。
自分とはまったく考えることが違うからこそ、ジゼルを私の中に存在させるまでには少し時間が掛かりましたが、アフレコが進んでいく中でしだいにしっくり馴染んできたと思います。
――アフレコ現場には久保先生もいらっしゃると伺いました。

東山

監督たちや久保先生から頂くディレクションに沿って演じてみると、「おっしゃる通りだな」と思うことが本当に多く、『BLEACH』の世界の解像度がより上がっていくのを感じました。
久保先生のなかに確固たるキャラクター像があるので、そこに向かってまるでダーツでブルを当てるかのように、ピンポイントの正解を狙いに行くんです。
彫刻を仕上げていくような繊細な作業でしたが、久保先生や田口監督をはじめスタッフの皆さんの情熱をひしひしと感じて、とてもモチベーション高く演じることができました。
また、お芝居に限らず、アニメーションの1シーン1シーンにその情熱が表れているのを感じるので、どこを切り取っても熱量が凄まじい作品だなと思います。
――これまで様々なキャラクターを演じられた東山さんですが、役作りで大切にしていることはありますか?

東山

自分のなかで、キャラクターのイメージを膨らませることを意識しています。
演じている私自身が演じていることを忘れてしまうくらいに、キャラクターとして心からセリフを発することで、視聴者の皆さんもより作品に没頭できるのかなと思っていて。
自分のなかでキャラクターが生きる瞬間が多ければ多いほど、自分と役の境界線は無くなっていくと思うので、キャラクターの性格や感情を理解して、落とし込むようにしています。
――ジゼルは相手をゾンビにする能力を持っていますが、東山さんがゾンビ化してみたいキャラクターはいますか?

東山

エス・ノトですね。
バンビエッタ(・バスターバイン)をゾンビ化したときにキャラクター性がガラッと変わっていたので、もしかしたらエス・ノトが陽気な性格になるかもしれないなって(笑)。
ゾンビ化することでエス・ノトが一番恐れていたことから遠ざけてあげられるかもしれないですし、もしそうであればゾンビ化したいですね。
――「-訣別譚-」にちなんで、最近“訣別”したものはありますか?

東山

大好きだった二度寝と訣別しました(笑)。
「この世にこれ以上気持ちのいいことはない」と思うくらい二度寝が好きで、なんなら三度寝、四度寝まで突入して気が済んだら起きるという生活をしていたんです(笑)。
時間がもったいないのでやめたいと思いつつ、つい欲に負けてしまい……。
ただ、近頃の寝苦しいほどの暑さのせいで、「寝ていられない」という気持ちになってスパッと起きられることが増えたんです。
快適すぎるがゆえに寝てしまうなら、むしろ寝心地が悪いくらいのほうが良いのかもしれないと思っているところです。
そんな気付きを得たので、夏が明けて秋の心地よさが到来しても、何か策を施して一発で目覚められたらいいなと思っています(笑)。
――TVアニメをご覧の皆さまにメッセージをお願いします。

東山

先ほどお話しした“どんでん返しに次ぐどんでん返し”という魅力が最後の最後まで詰まっている物語なので、毎話の展開にハラハラしていただけるのではないかなと思います。
強大な力を持つ滅却師クインシーや、そんな彼らを束ねているユーハバッハという凄まじい敵が立ちはだかる戦いがどのように決着していくのか、最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。
護廷十三隊と「見えざる帝国ヴァンデンライヒ」だけではなく、一護と雨竜の関係性も大きな軸になると思うので、ぜひ1つ1つの戦いの行く末を見届けていただきたいです!