楠見尚己(兵主部一兵衛役)インタビュー
魅力あるキャラクターたちが可能にする
「千年血戦篇」の構成
――「千年血戦篇」の魅力や見どころを教えてください。
楠見尚己(以下、楠見)
話数によってスポットが当たるキャラクターが変わり、多くのキャラクターが主役になるところが魅力の1つだと思います。これだけ多くのキャラクターがいながら、どの人物も主役になれる魅力を持っているというのは、『BLEACH』が多くの方々から愛される理由の1つであり、原作を描かれた久保先生の素晴らしいご手腕だと思いますね。
――『BLEACH』との出会いをお聞かせください。
楠見
「尸魂界(ソウル・ソサエティ)篇」が連載されていた頃、娘が『BLEACH』のコミックスを集めていて、「面白いよ」とオススメされたのをきっかけに1巻から読み始めました。言い出せばキリが無いほど魅力が詰まっていて、「すごく面白い!」と思いながら夢中で一気に読んだのを憶えています。
――『BLEACH』で好きなキャラクターは誰ですか?
楠見
兵主部を演じる僕としては、やっぱり零番隊が好きですね。なかでも、明るくて朗らかな曳舟桐生が好きなんです。
料理を作り終えたあとにスリムな姿に変貌するところも面白くて印象に残っています。
作中の状況としてはひっ迫していながらも、零番隊の登場によって所々にコミカルさが足されていった気がしますね。
護廷十三隊であれば、浦原喜助や京楽春水が好きです。
普段は飄々とした態度を取っているけれど、いざというときは真剣な顔を見せる。
そのギャップが2人の共通点かなと思います。
――アフレコで印象に残っている出来事はありますか?
楠見
森田くん(黒崎一護役)と一緒にアフレコをした際、一護として大きな声を出す収録を終えたばかりなのに率先してガヤをやられていて、素敵な座長だなと印象的でした。意識したのは二面性――
描かれる兵主部の新たな一面
――兵主部を演じるうえで、注意していることがあれば教えてください。
楠見
第1クールでは豪放磊落な性格を意識した声づくりでしたが、第2クールではおどろおどろしい雰囲気の兵主部も描かれます。なので、二面性を声からも感じ取っていただけるように意識しました。
でも、ただ単に低い声を出して怖さや不気味さを押し出せばいいわけではなく「このときの兵主部はどういう心情か」を考える必要があって。
おどろおどろしい雰囲気をベースにしつつ、その場面の心情にあわせて微細な変化を加えていくんです。
「もっと不気味に」「もう少し軽く」「ゆとりを持って」など、久保先生や音響監督さんにもご意見を頂きながら、その場面にあった兵主部を演じられるように心掛けました。
また、初めて兵主部を演じたのは『BLEACH Brave Souls(ブレソル)』というゲームアプリでしたが、そのときは基本瞬発的なワンフレーズのセリフの収録だったんです。
でも、アニメではゲームよりも物語の流れやキャラクターの心情をじっくり考えて演じることができたので、楽しかったですね。
――楠見さんは海外作品の吹き替えとしてもご活躍をされています。吹き替えとアニメのアフレコの違いはありますか?
楠見
吹き替えは演じる対象が俳優さんなので、元の映像の表情や声のトーンを大切にしながら声を当てていきます。明確に演じ方の正解があって、日本語に落とし込んでいくイメージでしょうか。
一方、アニメでは声優が演じ方をアプローチできるところが面白いですね。
たとえばキャラクターが怒っている場面を演じる場合、強い口調で怒っているのか、それとも嫌みっぽく怒っているのか。
怒っている表情に対して、どう演じるか考えてトライできるんです。
それぞれ異なる魅力や奥深さがあるので、どちらのアフレコにもやりがいを感じています。
――「-訣別譚-」にちなんで、最近“訣別”したものはありますか?
楠見
舞台の衣装として役立つかと思い、ボロボロになったズボンやシャツを何枚も保管していたんです。たとえば放浪者を演じるときに、擦り切れている衣装のほうが雰囲気が出るじゃないですか。
でも、年季ならではの味というのは再現するのが難しいので、そういった役を演じる機会があったときのために取っておいたのですが、「使う機会があまりないかも……?」という考えに至り、思い切って訣別しました。
40年くらい前から集めていたので、押入れがいっぱいになるほどの量がありましたね。
なかには、わらじや番傘など珍しいものもあって。
名残惜しさもありましたが、押入れがスッキリしたので良かったです。
――TVアニメをご覧の皆さまにメッセージをお願いします。
楠見
兵主部とユーハバッハの戦いに、引き続きご注目いただけたら嬉しいです。また、先ほどお話しした“それぞれのキャラクターが主役になる”というのは、魅力ある登場人物が揃う『BLEACH』だからこそできることだと思うので、一人ひとりの戦いに想いを寄せてご覧いただきたいです。
「勝負ついた!」と思いきやまだ奥の手がある……、という戦況が二転三転する面白さも醍醐味だと思うので、最後までお楽しみください。