BLEACH 千年血戦篇

SPECIAL

梅原裕一郎(ユーグラム役)×小野友樹(バズビー役)インタビュー

敵役のキャラクターから感じた愛!?
『BLEACH』のイベントで味わった感動!

――『BLEACH』で好きなキャラクターを教えてください。

梅原裕一郎(以下、梅原)

ユーハバッハです。
ハッシュヴァルトにとって重要なキャラクターですし、僕としても菅生さん(ユーハバッハ役の菅生隆之さん)とアフレコでご一緒させていただく機会が何度かあったので印象に残っています。
作中では、一護の前に立ちはだかる強大な敵ですが、菅生さんのお芝居からは、“ユーハバッハに対する深い愛”を感じます。
ユーハバッハそのものの言動はどれも恐ろしくて、優しさは微塵も感じないのですが(笑)。
それでも、手段を選ばない行動、発する言葉のすべてに菅生さんの愛と説得力を感じます。

小野友樹(以下、小野)

僕にとって、『BLEACH』の好きなキャラクターとして絶対に揺るがないのは一護です。
以前、第2クールのインタビューで雨竜が好きと答えましたが、養成所時代に雨竜でアテレコの練習をした思い出も含めて雨竜を挙げさせていただきました。
もちろん雨竜も大好きなキャラクターの一人というのは間違いないですが、一護は、僕の中で他に比べられる存在がいないと思えるほど、『BLEACH』のなかでの唯一無二のスーパーヒーローです。
一護の在り方、考え方、振る舞い方、愛され方、それらすべてをひっくるめて“これこそがヒーローだ”と思える一護に憧れます。
――『BLEACH』のセリフで惹かれたものを教えてください。

小野

一護の「俺以外の誰かにできたとしても 俺がやらずに逃げていい理由にはならねえんだよ!」(コミックス68巻618話)です。まさに“ヒーロー”のような、主人公のお手本のようなセリフで、すごく印象に残っています。
バズビー役のオーディションをやらせていただくことが決まって、改めて『BLEACH』を読み返してこのセリフを読んだときには、「やっぱり、一護はこれだ!」という気持ちになりましたね。

梅原

僕は何気ないシーンではありますが、バズビーが背後からナジャークープを攻撃した後の「……どういう事だい」(コミックス69巻623話)という京楽のセリフです。
それまで敵対していた相手を前に肩を落とすような、力の抜けた空気になる緩急を明夫さん(京楽春水役の大塚明夫さん)のお芝居から感じて、それがすごく好きで印象に残っています。

小野

明夫さんが演じられる京楽は“京楽すぎる”よね(笑)。
僕も「……ちょっと…… 休憩してからにしようか………」(コミックス72巻654話)という一言にぞっとしました。
“あらゆる感情や状況がすべて声に乗っているわけではないのに、声ですべてを表している”というのを感じました。
――「千年血戦篇」から新たに加わったお二人の印象に残っている出来事を教えてください。

梅原

TVアニメ『BLEACH 千年血戦篇』第4弾PVで、ユーハバッハとハッシュヴァルトが同じセリフを読む機会がありました。
菅生さんと一緒のセリフを読むという貴重な体験ができたこと、セリフを読むときに菅生さんが優しく合わせてくださったこと、そのどちらもが嬉しかったです。

小野

僕は「ジャンプフェスタ2024」の『BLEACH』ステージに登壇したことです。
僕がアテレコの練習としてアニメを台本に起こしていた“あの『BLEACH』”のステージに、出演者として立たせていただけたことが本当に嬉しかったです。またそこで行われた”シーンプレゼン大会”。
他の役者さんがネタに走ったこともあって優勝させていただいた上、記念の原画展グッズTシャツまでいただけたこともすごく嬉しくて思い出深いです。
――演じるのが大変だと思うキャラクターを教えてください。

梅原

ナックルヴァールが大変そうだなと思います。
武内くん(ナックルヴァール役の武内駿輔さん)は“大変”と思ってはいないかもしれませんが……。
「千年血戦篇」からの参加ですからね、まぁハッシュヴァルトの僕もそうなんですけど……。

小野

バズビーの僕もそうですよ(笑)?

梅原

(笑)。星十字騎士団のキャストの中でも、僕と武内くんのキャリアは同じぐらいなのですが、『BLEACH』という歴史と、ある種の“座組”があるなかで、飄々としていてコミカルなシーンもあるナックルヴァールを演じるのは大変だろうなと思います。
でも、完成した映像を見ると本当に楽しそうに演じられていて、「僕だったら、あんな演技はできないな」と思いました。

小野

僕は……やっぱりバズビーです(笑)。
“幼馴染であり宿命の相手”と戦うキャラクターですから。僕が感じたことになりますが、バズビーは久保先生も制作の方々もすごく想いを込めているキャラクターだと思います。
というのも、本当にリテイクが多かったんです。
梅ちゃんと一緒に収録した第38話も、“言い方”“立ち位置”“ニュアンス”とあらゆる部分を録り直しました。何回録ったっけ?

梅原

ほとんどのシーンで、10回以上は録ったと思います。

小野

そうだよね。
短いセリフでも10回以上録り直したので、制作のみなさんのなかで明確に“見せたいもの”があったんだなと感じました。

バズビーの“限界を超えた死闘”を表現
“想い”を隠して演じたハッシュヴァルト――

――バズビーの最期のシーンを演じるうえで意識したことはありますか?

小野

通常時のバズビーは戦うときに咆えるような声を出すので、僕も喉がちぎれんばかりの声で収録しました。
でも、最後に放った「バーニング・フル・フィンガーズ!!!!」(コミックス70巻634話)は、バズビーにとって最後の最後に奥の手を出さざるを得なかった状況なので、芝居も“限界を超えた状態”を意識しました。
特大の威力を持つ奥の手の技。声優としては一番声を張りたい、声で一番盛り上げたいシーンです。
でもバズビーとしては「これが最後だ」と出しきろうとした、でも「もう出なかった」のだと思います。
そして「…お前に敗けたら……」「もっと悔しいもんだと思ってたぜ」(コミックス70巻634話)というセリフの間でカットが切り替わるシーンは、カットを跨いだ瞬間に急に魂が抜けたような、憑き物が落ちたような声になります。
カットが変わるのと同時に声のトーンも変わったら、役者としては「変だぞ」と思ってしまいますが、これも意味が込められた演出だと完成した映像を観て思いました。

梅原

さりげないシーンにも本当に一つ一つ丁寧にディレクションが入っていました。
――小野さんは、バズ役のオーディションも受けられたんですよね。

小野

男性キャラクターの幼少期は女性キャストが演じられることが多いので、「自分が演じる」という心づもりで魂を落とし込むところまで向き合う機会はなかなかありません。
ですので、オーディションを受けるにあたって幼少期のバズビーとも全力で向き合えたことは、大人のバズビーを演じる僕にとってすごく嬉しかったですし、ありがたかったです。
結果は千晃(バズ役の小林千晃さん)が演じることになりました。
僕が幼少期の声を演じるのが「聞きたかった」というのが、オーディションを受けさせてもらった真相のようです。
でも、バズビーとの戦いを終えたハッシュヴァルトが歩いているシーンでは幼少期と現在のバズビーの声が重なる演出もあって、稀に見ない“受かったキャラクターと落ちたキャラクターのかぶせのセリフ”という状況を体験できました(笑)。
――小林千晃さん(バズ役)と井上麻里奈さん(ユーゴー役)の演技をご覧になった感想をお聞かせ下さい。

小野

正直なところ、映像を見るまでは「千晃がバズビーを演じるのでは、声が可愛すぎではありませんか~」と少し懐疑的に思っていましたが、14歳頃のバズビーの声を聴いて仰天しました。
特に声を張るシーンは「僕が録ったっけ?」と思えるくらいに、僕が若い時の声と同じで、二度見ならぬ“二度聴き”しました。

梅原

井上さんが演じられたハッシュヴァルトは、当時の “自己肯定感が低い”という闇を抱えているハッシュヴァルトと、そこからバズビーに出会って徐々に救われ、心を開いていったハッシュヴァルト、その両方がすごく伝わってきました。
――バズビーとハッシュヴァルトの関係性を言葉で表すなら、なんと表しますか?

梅原

掛け違いというか、すれ違いというか……。幼少期のハッシュヴァルトにとって、バズビーは自身の存在理由になっていたのだと思います。
“この人と一緒なら生きていける”“この人なら自分を認めてくれる”という存在だったけれど、ユーハバッハが二人の前に現れたことによって関係性が変わって、ハッシュヴァルトにとってユーハバッハが存在価値を与えてくれる人になってしまった。
そして、“分け与える力”がバズビーの力を高めていたという残酷な事実を知り、それがさらなるすれ違いを引き起こしてしまった。
きっとハッシュヴァルトは、バズビーならどんな自分も受け入れてくれると思っていたのではないでしょうか。
ただ、バズビーはそうではなかった。そのことが、どんどんすれ違いを加速させてしまった、そういう拗れたものだと思います。

小野

言葉にできない関係性ですし、言葉にするのは少し野暮かもしれませんが、強いて言うなら“宿命”だと思います。
生まれや育ち、そこからの時間といった“描かれているすべての時間”が二人それぞれの感情や生き方を表していて、その他の人生の描写がないがゆえに、すべてが“宿命”だと、誰よりも切ない関係だと思います。
――描かれていないシーンは、想像しながら演じられるのですか?

小野

若干想像しましたね。
必死に鍛錬するユーゴーにアドバイスしたのか、アドバイスしても伸びないだろうと思ってユーゴーがひたすら一人で頑張る姿を見守り続けたのか、どっちなのだろう、みたいなことを考えました。
――第38話ではバズビーとハッシュヴァルトの過去が明らかになりましたが、第38話を演じるまで、バズビーとハッシュヴァルトの過去をどのあたりまで意識して演じていましたか?

梅原

これまでもハッシュヴァルトの心の片隅にはバズビーの存在があったと思いますし、映像で「二人の間に何かありそう」という演出もありましたが、“声”ではそれを出さないほうが正解だろうと思って演じていました。
後に描かれる石田雨竜とのシーンで、色々な想いが出て過去がすべて清算されるのかなと思うので、ハッシュヴァルトのキャラクターがブレないように、彼の“想い”は出さずに演じました。

小野

僕はものすごく意識していました。
ただ、「何でだ」「気に食わねぇ」という気持ちはバズビーの根底にずっとありつつも、挑発度合いやタイミングは考えられるキャラクターなので、なりふり構わず挑発するわけではないという“バランス”を大事にしていました。
制作の方々もそれを意識されていたのか、熱量を出し過ぎ、もう少し勢いが欲しい、というような“バランス”に関するディレクションが多かった気がします。
――第38話を演じ終えて、改めてご感想をお聞かせください。

小野

バズビーがどんなに挑発しても、物語的にハッシュヴァルトが絶対に乗ってこないことはわかっていましたが、僕の中では闘志むき出しで「心の中は動かしてやる」と訴えかけながら演じました。

梅原

僕もバズビーの熱量をキャッチしたくなってしまうので、乗らないようにしなければと意識していました。
でも、あのバズビーの熱量はおのゆーさんにしかできないな、と一緒にアフレコをしていて思いました。

小野

嬉しいですね。声優としてマイク前ではセリフでしか語れないので、「ここはこういう想いで演じる」というような演技プランを話すことはありませんが、そういった言葉を交わさずとも訴えかけていた熱量を届けられていたんだ、と今答え合わせができました。
「おのゆーさんにしかできない」なんて、バズビー役としてこれ以上ない褒め言葉なので嬉しいです。
僕からも、ハッシュヴァルトは梅ちゃんでよかったなと思います
――お互いに訊きたいこと・言いたいことはありますか?

小野

梅ちゃんはハッシュヴァルトを演じていて何回声が枯れた?

梅原

枯れてないですよ。

小野

ですよね?僕にも聞いて(笑)?

梅原

バズビーを演じて何回枯れましたか?

小野

4回だよ。梅ちゃん……、もっとしっかりやってよ~!

梅原

いやいや、キャラクターの違いがあるじゃないですか(笑)。
ハッシュヴァルトが急に熱血キャラになったらおかしいですよ。

小野

(笑)。

梅原

第38話以降にも少し熱が上がるシーンがあるのですが、キャラクターの印象を変えずにどこまで熱量を出すかがかなり難しかったです。
だから、ディレクションも細かくいただきました。

小野

バズビーの想いを継いで、声を枯らすほど叫んでほしかったな~。

梅原

第38話以降から急にですか?(笑)。

小野

僕から梅ちゃんに“喉を枯らせ”という想いを託したのに(笑)。

梅原

どんな想いですか(笑)。
僕からおのゆーさんへの質問です。
おのゆーさんにはバズビーとハッシュヴァルトのようにすれ違ってしまった関係性の人はいますか?

小野

基本的に僕は、「誰しもが一度は誰かとすれ違っている」という考え方です。
バズビーとハッシュヴァルトのように浮き彫りになるかならないかの違いはありますが。
それに、今すれ違っていても、数年後に再び交われることもある。一護みたいに、あのとき対立した人が逆に助けてくれたという経験が僕の人生にもあるので、“今すれ違っている人とこの先もずっとすれ違ったまま”という考え方にはならないです。
でもこの価値観は、梅ちゃんの質問に答えようとして、言語化してみて初めて気づきました。
梅ちゃんはどうなの?

梅原

僕は、すれ違ったなと思えるほど深く関わらないかも……。
最初から無意識に平行線を保っているかもしれない。

小野

はっきり言える梅ちゃんの在り方と、そういう角度の生き方がいいね。
――「相剋譚」にちなんで伺います。最近、ご自身が相剋していることはありますか?

小野

僕は食べることが大好きで、見た目の変化・体型を気にせずにどんどん食べてしまいます。
でも衣装の決まりがあったり、体重が増え続けると周りに心配をかけたりしてしまうので、“食べてはいけない”という気持ちと“食べたい”という気持ちで、いつも相剋しています。
最近、体重が100キロを超えてしまって、「まずいな」と思い95キロまで落としました。

梅原

外見からは全然そんなふうに見えないですよ。

小野

それもまた、数字と見た目で相剋しているところなんだよね。
――第2クールのインタビューで“訣別”したものを伺ったときに、「深夜のドカ食いと訣別しました」とおっしゃっていましたが、今は訣別できずに相剋しているということですか?

小野

ドカ食いはバズビーとハッシュヴァルトのように簡単に訣別できるものではないですから。
言うならば、僕こそが「相剋譚」であると言えますね(笑)。
ただ、“深夜のドカ食い”とは訣別できています。それなのに体重が増えてしまうんです……。

梅原

僕は食欲よりも睡眠欲が強くて、声優をしている身として、絶対に朝早く起きたほうが喉も開いて身体にも良いと頭では理解していますが、本当に起きられなくて相剋しています。
いっとき、朝早く起きるのが習慣化したこともあったのですが、2週間ほどしか続きませんでした。

小野

僕のドカ食いと同じだね。

梅原

やっぱり三大欲求には逆らえません。
――最後に、アニメ公式サイトを訪れたファンに一言お願いします。

小野

バズビーとして生きることができて嬉しかったです。
バズビーの最期をご覧になられた方には伝わっていたらと思うのですが、持っているものをすべて出し切りました。
あとはバズビー役として、“想い”をぶつけたハッシュヴァルトの行く末を見守り、一人の『BLEACH』ファンとしても、物語の最後までを皆さんと一緒に見守りたいなと思います。

梅原

ここまでアニメ『BLEACH』をご覧いただきありがとうございます。
ハッシュヴァルトとして、「相剋譚」で一つの山場を越えたなという気持ちと、もう戻れないところまできてしまったなという気持ちがあります。
ただ、これからまだまだ活躍の場面がありますので、全力を尽くして演じさせていただきたいと思います。
ぜひ物語の最後までお付き合いください。